「いーちゃん最近顔色よくなったわね」
 つーちゃんに言われて私は思わず鏡を睨みつける。確かに桜庭さんちに住み込んでから毎日ご飯がおいしいし、たまにデザートが出るし、冷蔵庫の電気はいつもついててプリンとかゼリーとかが入ってるし、お風呂上りにはアイスがあるし・・・・・・ってちょっと待て。
「……私、太った?」
 真剣にいったのに、つーちゃんはくすくすと笑ってて相手にしてくれない。


H a p p y  L i f e


「えー下野さん全然太ってないし、気にしぎだよ」
 修学旅行の班で一緒になってから話すようになった小杉くんは面白いし優しい。梶原くんもコクコク頷いてくれた。
「そっかー。うーん」
「あっ!数学のプリントやってない!!!」
 小杉くんが突然がばっと立ち上がった。そうそう、この前終わらなかった数学のプリントが宿題になってたんだ。私は雷先生に教えてもらいながらとりあえずは全部解き終わっていた。
「私のでよければ見るー?」
「ありがとう!超ありがとう下野さん!!!」
「全く」
 梶原くんが微妙に呆れてたけれど小杉くんはもう聞いちゃいない。つーちゃんは小さく息をついてトランプを配りだした。最近このメンバーでババ抜きが流行っている。大富豪とかブラックジャックとか頭を使うゲームはつーちゃんと梶原くんが強すぎるからって却下になった。
「最近いーちゃん勉強ができるようになってきたのよ」
「すごい すごい」
 つーちゃんと梶原くんは二人とも頭がいいのに褒めてくれるのは恥ずかしい。
 元々勉強はそんなに嫌いじゃなかったけれど、雷くんに勉強を教わるようになってから勉強がめきめきできるようになっていった。
「雷先生のお陰だね」
「ううん、いーちゃんが頑張ってるからよ」
 つーちゃんが私の頭をなでなでした。つーちゃんがとても嬉しそうに笑うとこっちまで嬉しくなる。
「下野さん 体育も がんばってるし」
「体育はまぁ……あはは」
 体育は稔ががんばっているなんて……いえない。

「終わったー!!俺すごい!!」
 小杉くんががばっと立ち上がったかと思うと突然叫びだした。
「すごいのはいーちゃんだけれどね」
「ほんと下野さんありがとう!!」
「どういたしまして。字読めた?」
 人にプリントを貸したのなんて数えるほどしかないから(つーちゃんは普段やらないし今までの友達にこういう友達はいなかったから)、今更字が汚かったんじゃないかとか余計な心配までしちゃったり。
「全然!!俺の字の100倍は綺麗だよ」
 プリントを返してくれるときに小杉くんがこっそりと耳打ちをした。
「三人でまた遊びにおいでよ。奢るよっ」
 私を桜庭さんちに招いてくれた稔は小杉くんのおうちでバイトしている。料理は確実に無理なのできっとウェイターさんなんだろう。そういえば、小杉くんは稔とどんなこと話すのかなー。ちょっと気になる。
 稔のお陰で桜庭さんちに居候することになって、桜庭さんにメ・・・メイド服着せられたり、雷くんに勉強を教えてもらったり、三人でホラーをみたり、たまに桜庭さんと四人でお出かけしたり、きっと普通の中学生じゃ経験できないだろうことをたくさん体験しながら、私は過ごしている。

 チャイムがなるともう放課後。今日もあっという間に一日が終わってしまった。
「バイバイつーちゃん!」
「えぇ、また明日ね」
 学校帰りにいつも思うんだ。
 お父さん、泉は今日も楽しい一日を送ることができました。お父さんのことだからきっと元気だろうけれど、たまには会いたいです。お父さんがいないのは寂しいけれど、泉は稔や雷くんと会って毎日がとっても楽しくなったよ。
 明日も楽しい一日でありますように!
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