細い手、細い足。探るように視線だけ動かす。
相手もこちらを確認して、目があって離れるまで一瞬。

「……何」

うちに初めて来たその人は中学生くらいだと聞いてたんだけれど、ぱっちりとした目で女の子みたいだと思った。細くて小さくて可愛い子どものはずなのに、荒んだような、枯れたような瞳はあまりにも可哀相でなんだか泣きそうになった。

「どうしてお前が泣くんだよ」

稔に指摘されて、僕は初めてその雫に気がついた。


あのとき僕が泣いたのには明確な理由なんかなくて、ただ、彼を見ていたらこれまでいいように誤魔化していた自分の感情が溢れてしまいそうになっていた。

「……知らない」



き   み   は   き   み   を   こ   ろ   す

(今なら解る。きっとあれは、俺が君という大きな闇に飲み込まれるという感覚。)
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